UNKN_LEVEL: ★★★:完全な未知

【奇跡】キス竿で55cmのイシダイ!?ライトタックルの限界を超えたドタバタ釣行記

【奇跡】キス竿で55cmのイシダイ!?ライトタックルの限界を超えたドタバタ釣行記
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磯の香りと共に、研究員、帰還す

ラボの自動ドアが、けたたましい音と共に開いた。

そこに立っていたのは、こんがりと日に焼け、全身から潮の香りを漂わせる潮目研究員その人だった。その手には、やけに大きなクーラーボックスが握られている。

「ナギ君!ただいま!いやはや、今日の観測は歴史に残るよ!」

「おかえりなさい、潮目さん。その興奮具合と潮臭さ…どうせまた、観測そっちのけで釣りでもしてたんでしょう」

呆れたようにナギが消臭スプレーを構える。

「違う!これも立派なフィールド観測さ!そして、とんでもないデータが取れたんだ!」

潮目はクーラーボックスを床に置き、誇らしげに胸を張った。


これは奇跡か、それともただの無謀か

「いいかいナギ君。今日、僕はね、55cmのイシダイを釣り上げたんだ!」

自信満々に言い放つ潮目。しかし、ナギの表情は変わらない。

「はいはい、すごいですね。潮目さんの話はいつもスケールが5割増しですから。実際は35cmのアイゴあたりでしょう」

「信じてないな?いや35cmのアイゴだってけっこうパワフルだぞ。それはそれとして、とにかくこれを見てよ!今日の生々しい観測ログさ!」

潮目はそう言って、びしょ濡れのメモ端末をナギに突きつけた。

【潮目研究員のフィールド・ログ】
「55cmのイシダイ!ボート海釣り、深さ約9mの岩場周辺で釣りました。
仕掛けは、20号負荷の1.8mキス竿、オキアミコマセ、コマセ天秤仕掛け。ハリスはビシアジ用2号ハリス2本針。
もともと黒鯛狙い、竿は昔使ってた硬めのキス竿を再利用してるだけでして、どう見てもイシダイを仕留められる仕掛けではありません。
リールのドラグ調整が絶妙に良かったのと、イシダイの走り出しにかろうじてハリスが耐えてくれたので、なんとか上げることができました。
イシダイ釣りの情報としては、ほとんど参考にならないと思います。イシダイ狙いなら、イシダイ対応の準備をしましょう。」

ちなみに本命の黒鯛もしっかり釣りました。

ログを読み終えたナギは、ピタリと動きを止めた。

「……キス竿?ハリス、2号?」

「そうなんだよ!」

「……ありえません。このタックルバランスで55cmのイシダイを?物理的にラインが持たないはずです」

「だろ!近くで見てた他のボートの人たちも、君みたいに絶句してたよ!」

潮目の言葉に、ナギは返す言葉を失ったようだった。

REQUISITION_DATA DETECTED

調査を継続するための推奨装備が観測されました。

>> ACCESS_DETAILS

偶然性のデータと、再現性のない奇跡

ようやく我に返ったナギが、冷静な口調で分析を始める。

「ハリス2号の直線強度はおおよそ3.5kgから4kg前後。55cmのイシダイの瞬発的な突進力は、その数倍に達することもあります。特に根に走られたら一瞬で切られるはずですが」

「それが切れなかったんだ!リールのドラグがジィィィーって鳴り響いて!竿は満月みたいにしなって!まさに奇跡のバランスだったんだよ!」

潮目は両手を広げ、魚とのファイトを再現してみせる。

「ログにもありますが、それは奇跡というか…限りなくゼロに近い確率の幸運が重なった結果ですね。再現性は皆無です」

「それを言っちゃあおしまいだよ!でも、この『ありえないこと』が起きるのが、データだけじゃ分からない自然の面白さじゃないか!」

「まあ、その幸運のおかげで、潮目さんが海に引きずり込まれなくて良かったとは思います」

ナギは小さくため息をついた。


天啓は、常に静寂を破って訪れる

その時、ラボのメインスピーカーから、凛として冷たい声が響き渡った。

「――その幸運も、観測データとしては価値があるわね、潮目」

「しょ、所長!?」

潮目とナギの背筋が、凍りついたように伸びる。モニターに、黒髪の美女、白波所長の姿が映し出された。

「あなたの興奮する声が、こちらの部屋まで一部始終聞こえてたわ。貧弱な装備でよくあげたものね」

「あ、ありがとうございます!」

「ただし、運に頼った観測は二流のすることよ。その奇跡に甘えて、貴重なサンプルを取りこぼすのはラボの損失だわ」

所長の言葉に、潮目はシュンと小さくなる。

「ナギ」

「はい、ボス」

「潮目専用に、イシダイ用のタックル一式を最高スペックで発注なさい。請求は研究開発費で落とすわ」

「えっ!?」

驚く潮目をよそに、所長は静かに続けた。

「いいこと?潮目。次は60cmオーバーを釣り上げて、その遊泳速度、捕食行動、すべてをデータ化して持ち帰りなさい。これは美食…いえ、業務命令よ」

一方的にそれだけ告げると、通信は静かに切れた。

「…所長…!」

感激に打ち震える潮目。その横で、ナギがやれやれと首を振る。

「ボスはあなたに甘いですね。まあ、次こそは海に落ちないでくださいよ」

「もちろんだよ!よーし!見てろよ60cmオーバー!この潮目が必ず観測してやるからな!」

ラボに、潮目の雄叫びがこだました。

MISSION_EQUIPMENT: FINAL_CHECK
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