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イレクターパイプでソーラーシステム 第三話 : 壁に穴は開けない!パズルマットと根性でソーラーケーブルを引き込む泥臭いハック

イレクターパイプでソーラーシステム 第三話 : 壁に穴は開けない!パズルマットと根性でソーラーケーブルを引き込む泥臭いハック
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ラボの片隅で生まれた謎のオブジェ

ラボの片隅で、潮目研究員が何やら満足げに腕を組んでいた。

彼の手元には、不格好に切り抜かれたパズルマットの切れ端と、粘土のようにこねられたエアコン用パテが鎮座している。

「潮目さん、また何かガラクタを生成したんですか」

「これはガラクタじゃない!文明の利器と人間の知恵が融合した、偉大なる発明のプロトタイプですよ!」

目を輝かせる潮目に、ナギは心底どうでもよさそうな視線を送る。

「はあ。それで、床に敷くべきパズルマットがなぜそんな悲惨な姿に?」

「ふふふ、ナギ君。言葉で語るより、この記録を見れば全てがわかりますよ!」

そう言って潮目は、誇らしげに1枚のドキュメントを差し出した。


涙とパテにまみれたフィールド・ログ

ナギはため息を一つついて、そのドキュメントに目を通し始めた。

「前回設置したソーラーパネルの、感動のフィナーレです!」

【潮目研究員のフィールド・ログ】
DIYでソーラーパネルを設置したときの難関の一つは、配線の引き込み。
なお配線は、太陽光パネル用の4mm2、10mのケーブルを用意しました。
MC4圧着工具と端子も用意しておきましょう。
最初はエアコンの配管穴を使って引き込もうと思ったのですが、思いのほか狭くてケーブルが通りませんでした。
次善の策として、角形ガラリを、ちょっとだけこじ開けてケーブルを通します。
あ、MC4端子は、ケーブルを通してから装着しましょう。
家の内側のレジスターですが、ケーブルが通る程度にメッシュに穴を開けました。
こうするとレジスターのシャッターが閉まらないので、シャッター部分も切り欠こうと思ったのですが、なんということでしょう、手持ちの機材で切り欠くことができませんでした。
一応、インパクトドライバにドリルを装着してトライしてみたのですが、シャッターが薄くてたわんでドリルが効きません。
じゃあレジスターを外して加工しようかと思ったのですが、がっちり固着していてはずれない。無理に剥がすと壁紙もバリっといきそうで中断しました。
ならば次の策。蓋を作ればいいんです。程よく隙間を残して通気性も確保できるようなやつをです。
一枚余っていたパズルマットを切って、マジックテープをつけて着脱可能にしておきます。
最後にケーブルとメッシュの間を、これまた余ってたエアコン用パテで埋めときます。
虫の侵入とか気になるようなら、不織布をあとで貼っておけばよし。
ケーブル引き込み、これにて完了です。

「……」

「どうです!この試行錯誤の連続!諦めない心が生んだ逆転劇!」

「要するに、計画性のない行き当たりばったりの作業で、最終的に子供の工作みたいなもので誤魔化したという記録ですね」

「誤魔化したんじゃない!最適解を見出したんです!」

REQUISITION_DATA DETECTED

調査を継続するための推奨装備が観測されました。

>> ACCESS_DETAILS

その場しのぎか、ブリコラージュか

胸を張る潮目を無視して、ナギは冷静に分析を始める。

「そもそも、窓の隙間から引き込めるフラットケーブルを使えば、建具を一切傷つけずに済んだのでは?」

「それだと雨戸が閉められないんですよ」

「まあ、写真を見る限りだと、いうほど悪くはなさそうですが」

「でしょ? ロマンですよ! 手元にあるものでなんとかする、これこそがDIYの醍醐味なんです!」

「その結果がパズルマットの蓋ですか。気密性や防虫性の観点から、恒久的な対策とは言えませんね」

「でも、完全密閉したら通気性に問題が出ますから。ほら、ほどよく隙間があるし。虫が気になるなら不織布を後で貼るという手もありますし」

「せめてガラリのシャッターを加工する工具を買い足して作業すればよかったじゃないですか」

「うっ…、でもこの設計、マジックテープで着脱可能だから!これはメンテナンス性を考慮したサステナブルな設計なんです!」

「どこまでも都合の良い解釈ですね」

そう言いながらも、ナギは少しだけ考え込む素振りを見せる。

「…ですが、限られた工具と材料で、既存の建具への不可逆的なダメージを最小限に留め、なおかつゼロに近いコストで目的を達成したという一点においては、評価できなくもありませんが」

「でしょ!そうでしょう!わかってくれますか!」

MISSION_EQUIPMENT: FINAL_CHECK

天啓は監視カメラの先に

潮目が小躍りしたその瞬間、ラボのスピーカーから、空気を凍らせるような凛とした声が響いた。

「監視カメラで全部見ていたわよ、潮目」

「しょ、所長!」

「ボス…」

潮目とナギの背筋が、音を立てて伸びる。

「随分と野蛮な施工ね。研究所の備品であるパズルマットを切り刻んだ件については、後で始末書を提出してもらうとして…」

潮目の顔がみるみる青ざめていく。

「…ただ、その場にある資材だけで問題を解決するブリコラージュ的アプローチ。災害時など、理想的なツールが手に入らない状況での応用が期待できるわね」

「え…?」

「特にパズルマットとマジックテープによる簡易的な蓋の発想は、被災地の応急処置マニュアルに追記できるかもしれない。無様だったけれど、低コスト・低技術で実現可能な代替ソリューションの有効性を実証したわ。特別手当を出してあげるから、もっとマシな材料で再検証しなさい」

突然の評価に、潮目は呆然と立ち尽くす。

「しょ、所長ぉぉ!ありがとうございます!」

嬉し泣きする潮目の横で、ナギがそっと呟いた。

「(…結局、褒められてる…)請求書は来ないようで良かったですね、潮目さん」

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